V 【説教】2022年5月15日

2022.5.15 復活節第五主日礼拝
詩編 第145篇1〜21節
使徒言行録 第14章21〜28節
ヨハネによる福音書 第13章31〜35節
                          

「互いに愛し合いなさい」

 本日はヨハネによる福音書を中心にみ言葉に聴いてまいりましょう。ヨハネによる福音書におきまして、きょう皆さんと聴いてまいりますこの箇所から、イエス・キリストのお別れ、別離の説教、告別説教と言われている箇所が、きょうのところから始まってまいります。その別離とはどういうことなのでしょうか。

 イエス・キリストは、告別説教において弟子たちに次のようにおっしゃいます。33節ですが、「子たちよ、いましばらく、わたしはあなたがたと共にいる。あなたがたはわたしを捜すだろう。『わたしが行く所にあなたたちは来ることができない』とユダヤ人たちに言ったように、今、あなた方にも同じことを言っておく。」とおっしゃいます。そのことの意味を、このイエス・キリストを前にした弟子たちは、その意味がはっきりとはわからなかったのです。

 本日の後のところですけれども、シモン・ペトロが、主イエスのお言葉を聞いて、36節で、「主よ、どこへ行かれるのですか。」と尋ねます。「イエスは答えられた。『わたしの行く所に、あなたは今ついて来ることはできないが、後でついて来ることになる。』」と、主はおっしゃいます。そのことを、ペトロは聞いて、先生である主イエスの身の上に、尋常ではない出来事が起こると、彼も直感したのでしょう。その後ペトロは「主よ、なぜ今ついて行けないのですか。あなたのためなら命を捨てます。」とまで申します。これは主イエス・キリストが十字架にかけられ、死んで復活され、そして、天の父なる神様の御許に登られる。そのことを指して、言っておられるのです。

 34節35節をご覧ください。「あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。互いに愛し合うならば、それによってあなたがたがわたしの弟子であることを、皆が知るようになる。」と、主はおっしゃいます。「新しい掟」とは何でしょうか。それは互いに愛し合いなさいということです。人を愛するという掟、戒めは、旧約聖書にも記されております。旧約聖書のレビ記に「自分を愛するように、隣人を愛しなさい。」とありますように、何もここで主イエスから言われなくても、元々与えられていた戒めです。それではなぜ、「新しい掟」と主はおっしゃるのでしょうか。それは、「わたしがあなた方を愛したように」というみ言葉、そのことを見るときに、わかってまいります。主がわたしたちを愛してくださっているということ。そのことは、何によって示されているのでしょうか。それは十字架です。わたしたちの罪が赦されるために、本来わたしたちが受けるべき刑罰であった十字架の刑罰をイエス・キリストが代わりに受けてくださったということ。イエス・キリストがかかられた十字架。そのことは、わたしたちの想像をはるかに超える苦しみでありました。十字架の横木に太い釘で腕と足を打ち付けられ、十字架にかけられる。大きな苦しみの極みの中で、死に至る。わたしたちの想像をはるかに超える苦しみです。その刑罰をわたしたちの代わりに受けてくださった。それは、この罪深いわたしたちの罪が赦されるため、わたしたちを救ってくださるため、愛し抜いてくださるためです。わたしたちに対する愛が、深いキリストの愛がそこに示されているのです。もちろん、わたしたちがその十字架の刑罰を受けることはできませんし、赦されておりません。わたしたちの愛は、キリストの愛の深さには到底比べることはできないのですけれども、主の十字架を見上げ、キリストの愛の恵みにあずかってわたしたちが隣人を愛そうとするときに、わたしたちに力が与えられるのです。そこが隣人を愛することにおける掟の新しさなのです。  わたしたちが互いに愛し合うということ。そのことは、わたしたちも日々、求めていることです。わたしたちのこの群れの中ももちろんですけれども、わたしたちの家族や、知人、友人、周りの人たち。その人たちとも互いに愛し合っていきたい。わたしたちはそのことを生きる上で最も大切にしようとします。しかしわたしたちは、隣人を愛していきたいと固く決意しても、いつも挫折してしまう者たちであります。十字架にかかってくださるほど、わたしたちを愛してくださっているイエス・キリストは、しかし、そのようなわたしたちを憐れみ、お互いを愛することができるように導き、力づけてくださいます。わたしたちを愛し抜いてくださっているキリストに信頼して、挫折しても、また立ち上がってお互いを愛していく。そのことができるように、イエス・キリストは、度ごとにわたしたちを助け起こしてくださり、導いてくださるのです。わたしたちを愛し抜いてくださるイエス・キリストの愛にお応えして、(挫折を繰り返していきますけれども、)わたしたちはお互いを愛し抜いていきたいと思います。お互いがお互いを愛していくことができるように、新しい掟を守って歩んでいくことができるように、わたしたちは常に祈っていくのです。わたしたちは、罪深く、弱い者たちでありますけれども、主はそのようなわたしたちを深く愛してくださり、わたしたちをそのままで受け入れてくださっています。そのことに深く感謝して、終わりの日、救いの完成の日に至るまで、わたしたちは全てを神様にお委ねして、信頼して、新しい掟に生きていく。そのように主はわたしたちを招いていてくださっています。何よりも大きく深い、主のわたしたちへの愛に、感謝して、主に信頼して、新しい掟であるお互いに愛し合うということ。そのことを実践していくことができるように、日々祈り求めてまいりましょう。

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