2019.12.1. アドヴェント1
  ヨナ書 第3章1〜10節、ルカによる福音書 第11章24〜32節

「神の言葉を聞き、それを守る人」

きょうの聖書箇所の最初のところで「汚れた霊」が出てまいります。これは前回出てまいりました「悪霊」と同じです。汚れた霊は、主イエスによって追い出され、人から出て行くと、砂漠をうろつき、休む場所を探しますが見つからない。それで「出て来たわが家に戻ろう」と言って戻って来ようとします。ここには、汚れた霊・悪霊にとって、最も居心地のよい休み場所は私たち人間の中なのだ、ということが語られているのです。悪霊は人間の中でこそ安住できるのです。悪霊がここで「出て来たわが家に戻ろう」と言っています。悪霊にとって、私たちこそが「わが家」なのです。最もくつろげる、安心できる、思い通りになる場所なのです。だから一旦は追い出されても、いつでも戻って来ようとしているのです。この話によって主イエスは何を語ろうとしておられるのでしょうか。

これと同じ話がマタイによる福音書の12章43〜45節にあります。そこと読み合わせてみると、この話のポイントがどこにあるのかが見えてくるように思います。そこには、汚れた霊が戻ってきたところにこのように語られているのです。「戻ってみると、空き家になっており、掃除をして、整えられていた」。ここに、ルカにはない言葉が一つあります。「空き家になっており」という言葉です。掃除され、きれいに整えられたこの私たちという家は、空き家なのです。そこに住んでいる人が、主(あるじ)がいないのです。私たちが自分という家をどんなにきれいに掃除をし、内装も外観も美しく整え、そして「汚れた霊はもうお断り」という札を掲げたとしても、その家が空き家で、誰も住んでいなければ、主人がおらず、家を守る人がいなければ、結局その家はより悪い悪霊(26節)に占拠されてしまうのです。「いや、空き家にしているわけではない」と私たちは思うかもしれません。自分という家をきれいに掃除し、リフォームして整え(25節)、そしてそこには自分が住んで、自分でその家を守っているのだ、決して空き家にしてほうってあるわけではない…。しかしまさにそれが悪霊の思う壷なのです。自分という家を自分で守っている、その自分は、悪霊に打ち勝つことができる強い者でしょうか。私たちが自分で家を守っている、というのは、この家のセキュリティーの面では、空き家であることと何も変わらないのです。大切なことは、自分という家に主イエス・キリストをお迎えすることです。主イエス・キリストに私たちの家の主人となっていただくことです。神様はそもそも私たちを、聖霊の宮として、神様の聖なる霊の住まいとして造って下さいました。私たちがその神様によって造られた本来の祝福された人間として生きるためには、主イエス・キリストを主人としてお迎えし、主イエスに宿っていただくことが必要なのです。

27節には、主イエスの話を聞いていた群衆の中のある女性が、「なんと幸いなことでしょう、あなたを宿した胎、あなたが吸った乳房は」と叫んだことが語られています。これは主イエスに対する感嘆の叫びです。彼女は、主イエスが悪霊に取り付かれた人を癒したことを見、またその出来事をめぐって語られた御言葉を聞いて、何とすばらしい方なのだろうと思ったのです。そしてその思いを、女性らしく、このようなすばらしい方を産み、育てたお母さんはなんと幸いな人だろう、という仕方で表現したのです。すると主イエスはそれに対して、「むしろ、幸いなのは神の言葉を聞き、それを守る人である」とお答えになったのです。「神の言葉を聞き、それを守る」というと、神様からの掟や戒めを守る、実行する、という意味にのみ受け止めがちです。もちろんそういう意味も込められているのですが、この「守る」という言葉にはもっと広い意味があります。「しっかり保管する」とか「見守る」というような意味でもあるのです。つまり、神の言葉を聞いて、その言葉をしっかりと心の内に受け止め、その御言葉を大切にし、それに聞き従っていく、ということです。そこにこそ、本当に幸いな生き方が与えられるのです。それは、あの汚れた霊が戻って来る話に即して言えば、主イエス・キリストを自分という家にお迎えし、そこに住んでいただき、主人となっていただく、ということです。「神の言葉を聞き、それを守る」とは、主イエスを心の内に迎え入れ、主イエスに住んでいただき、自分という家を悪霊の攻撃から守っていただくことなのです。そこにこそ、悪霊の支配から解放された、聖霊の宮としての、本当に幸いな歩みが与えられていくのです。

わたしたちは、神の御言葉を聞いて、それを信じて、私たちのために悪霊に勝利して下さった主イエスを私たちの内にお迎えして、主イエスと共に悪霊と戦う者となれるように祈り求めてまいりたいと思うのです。

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