2018.4.15.
詩編118:1〜29、 テサロニケの信徒への手紙一 1:2〜4

「信仰と希望と愛」

「あなたがたが信仰によって働き、愛のために労苦し、また、わたしたちの主イエス・キリストに対する、希望を持って忍耐していることを、わたしたちは絶えず父である神の御前で心に留めているのです。」(3節)

  今週からテサロニケの信徒への手紙一の御言葉に聴いてまいります。テサロニケの町は、現在のギリシャ共和国の北部にあった都市です。この町に使徒パウロは、伝道して教会をつくりました。しかし、間もなく彼に敵対する者たちによって引き起こされた騒動によって町を離れざるを得なくなりました。彼はその後その教会の様子を知りたいと思って、弟子のテモテを遣わしました。テモテからの報告は、パウロを喜ばせるものでした。それは、パウロが去った後も、しっかりとキリストの福音に踏みとどまり、困難にも負けずにキリストに仕えて歩んでいるという報告だったのです。パウロは、生まれて間もない教会の人々に励ましと勧告を与えるためにこの手紙を書いたのです。3節に「あなたがたが信仰によって働き、愛のために労苦し、また、わたしたちの主イエス・キリストに対する、希望を持って忍耐していることを、わたしたちは絶えず父である神の御前で心に留めているのです。」とあります。パウロは、テサロニケ教会の人々の様子を感謝と喜びをもって記しています。この記述は、口語訳聖書では、「信仰の働き」と、「愛の労苦」と、主イエス・キリストに対する「望みの忍耐」という三つの言葉で表されております。「信仰と愛と希望」ということです。パウロは、他の手紙の中でもこのことを取り上げております。これらは、信仰の大切な三要素です。それぞれの言葉に「働き」「労苦」「忍耐」という言葉が結びつけられています。

 まず、「信仰の働き」について考えてみましょう。「働き」とは、「行い」や「業」と訳される言葉です。働きは、しばしば聖書において信仰と対立するものとしてとらえられております。「人は律法の行いによって義とされるのではなく、イエス・キリストを信じる信仰によって義とされる」(ガラテヤ書、ローマ書等)という教えはプロテスタント教会の中心的な教えです。「人は良い行いをすることによって救われるのではなく、イエス・キリストを信じる信仰によって救われる」ということです。しかし、それは行いというものを排除するものではありません。わたしたちは、神から愛され多くの恵みを受けています。特にわたしたちの罪が赦されるために神は愛する御子を十字架にかけられるという大きな犠牲をはらってくださいました。わたしたちはそのことを深く心に留め、感謝するときに感謝の応答としての働きが起こるのです。神のため、教会のために良き業に励むことができるのです。わたしたちの信仰の働きを神はお求めになられ、わたしたちが良き業に励むことをお喜びになるのです。

 次に「愛の労苦」です。「信仰の働き」とも関連するのですが、愛するということは、愛する相手のために労苦するということです。神を愛するとは、神のために労苦するということです。「愛している」という言葉や気持ちだけではなく、実際に神のために労苦することです。信仰を保っていくということは、時には困難を伴うこともあり、そのために労苦するということも、神を愛することに伴うことです。神のために労苦するということは、隣人に対しても同じです。隣人を愛することは、隣人のために労苦するということです。ルカによる福音書10章のあの「善いサマリア人のたとえ」によってそのことを教えられます。強盗に襲われた人を見て、祭司やレビ人は見て見ぬふりをして通り過ぎて行きましたが、サマリア人はその人を介抱し、宿屋に連れて行き、宿代まで払ったのです。隣人を愛するということは、隣人のために具体的に労苦を担うことなのです。

 三番目は、「望みの忍耐」です。その望み、希望とは何に対する希望でしょうか。それは「わたしたちの主イエス・キリストに対する」希望です。それは、いかなる希望なのでしょうか。このことはこの手紙の全体の主題のひとつなのですが、それは10節にもありますように「御子が天から来られるのを待ち望む」ということです。主の来臨、主が再びこの世に来られる希望です。神の救いの完成される日、神のご支配が誰の目にも明らかになる日が将来必ず来る、それが将来いつか必ず、主イエス・キリストの再臨において起こるのです。わたしたちは、この地上において信仰者として様々な苦難を経験いたしますけれども、主の再臨の確かな希望によって、苦難の中にあっても忍耐していくことが可能になるのです。

 わたしたちは、「神に愛され・・・神から選ばれ(4節)」ております。そのことに感謝して、「信仰と愛と希望」に生きることが出来るように祈り求めてまいりたいと思います。

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